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紙袋とエコ問題についてできる話 紙袋とエコ問題についてできる話
chapter2

再生紙は実はエコじゃないという表現は、微妙に間違っているという話

2000年の前半頃から、製紙メーカーは「再生紙を作るためには新品の紙を作るよりも二酸化炭素排出量が増える」と言っています。古紙リサイクルはよいことだと思い込んでいた世間はびっくりしました。しかし、これは再生紙がよくないということではありません。

再生紙を作る方が環境負荷が高いとされる理由

古紙を再び使える古紙パルプにするためには、大きな労力がかかります。
古紙のリサイクル工程は日本製紙グループがサイトで紹介しています。

古紙から再生可能な再生パルプを作るには、繊維を一度ばらばらにほぐす必要があります。このとき、ただ水に入れて撹拌するだけではパルプを取り出すことはできません。
印刷インキを取り除くため苛性ソーダや脱墨剤を使用し、水ではなく温水を使用して紙をほぐします。ここからゴミを取り除き、漂白して、脱水します。この工程に化石燃料が多く必要なのです。

日本製紙は、2007年に古紙100%再生紙の製造を廃止しました。
古紙100%の再生紙の製造段階で使用する化石燃料は、新品の紙を作る場合の約二倍というデータを発表しています(図の緑色の濃い部分)。

画像出典:「再生紙ラインナップを再編、古紙100%配合製品を廃止」日本製紙グループ(2007年4月24日)

総排出量は、新品の紙を作る方が大きい?

ちょっと脱線しますが、お気づきの方はつっこみたくなるかもしれません。
よく見ると製造段階で二酸化炭素を排出している項目はもう一つあります。「製造段階(非化石燃料)」です。これに製造段階(化石燃料)を足すと89%で、古紙100%再生紙よりも二酸化炭素排出量は多くなります。
さらに、原料調達における11%を足すと新品の紙を作る方が古紙100%再生紙を作るより17%も上回ります。
燃やすのが化石燃料だろうと、非化石燃料だろうと、出るものは出るのなら総排出量を比べないとズルイ!と思うかもしれません。しかし、図の下に注がある通り、「カーボン・ニュートラル」の考え方で言えば非化石燃料による二酸化炭素は環境に影響を与える二酸化炭素としてカウントしないことになっています。
こうなる理屈は、「木を植えても二酸化炭素は減らない。カーボン・ニュートラルの話」をどうぞ。

偽装問題で信頼は落ちたものの、古紙リサイクルの問題が明るみに

2008年1月8日、TBSの『NEWS23』が日本製紙による古紙配合比率の偽装を報道しました。
日本郵政が日本製紙に「古紙40%で」と発注した再生年賀はがきに、古紙が1~5%しか含まれていなかったのです。

そもそも、はがき品質の滑らかで白い紙を、再生紙40%で作ることは技術的に困難と言われます。紙はリサイクルを繰り返すと強度が落ちるし、白くするためには漂白剤を多く要するからです。日本製紙は、無理めな仕事を引き受けてしまったのかもしれません。
報道時、日本製紙は「古紙利用の方が環境負荷が高いため、古紙の含有量を下げた」と説明をしました。本音はコストがかかるからでしょうが、環境負荷や技術的な問題があるなら、もっと早くに発注主に訴えればよかったですよね。

当初、これは日本製紙と年賀はがきだけの問題と思われていました。しかし、同年1月25日、製紙メーカーのほぼすべてが古紙配合比率の偽装を行っていたことが発覚。
当時の官公庁は、官公庁で使用・購入する紙は再生紙100%でなければならないという決まり(グリーン購入法)がありました。そのため、官公庁はコピー用紙すら入手できない事態に。かなり前から製紙業界全体が偽装していたことがわかります。

当時は世間全体が、古紙配合率は高ければ高いほどよいと思い込んでいた。
製紙業界では、再生紙の製造がコスト・環境・技術面で負担が大きいことは常識だった。
この乖離が根本的な問題でした。
しかし、この一連の流れによって再生紙の問題はやっと周知されました。

再生紙の製造自体が悪いわけではない

環境省は製紙業界の言い分をちゃんと勘案し、これを認めています。
2009年、環境省はグリーン購入の対象となるコピー用紙の基準を、古紙配合率100%から70%に緩和しました。
ここから今度は「実は古紙リサイクルは環境に悪いらしい」という表現が流布されていったのですが、この単純な言い方は間違っています。古紙が資源であることには変わりありません。

古紙を「白くて綺麗なパルプまで戻す」には、薬品やエネルギーを多く要します。パルプは洗浄するほど傷むので、使えない繊維が発生します。廃棄が出るし燃料も使うしコストもかかるしで、いいことがありません。
だから、古紙は白色度が低く多少粗悪でも問題ない製品にリサイクルするのが一番効率がいい。たとえば、包装や緩衝材は古紙で、ノートやコピー用紙は新品パルプでと使い分ければよいのです。

ただ、それでは需要と供給のバランスをコントロールできません。また、古紙含有率が高いほどエコだと誤認している人は多く、イメージのいい再生紙を使いたいが白くて綺麗でないと嫌だという困ったニーズもあります。
日本人は求める品質水準が高いので、白い紙のわずかな黒点も許しません。だから製紙メーカーは一所懸命に漂白していました。営利企業がニーズに合わせて製造するのは当たり前のことなので、製紙メーカーは難しい立場です。

解決策は、古紙の含有率

製紙メーカーが出した答えは、古紙パルプに新品パルプを混ぜるというものです。
黒を白にするよりグレーを白にする方が簡単なように、白い新品パルプを混ぜれば漂白の負担が減る。また、古紙パルプの傷んだ繊維の欠点を、強い繊維の新品パルプを混ぜることでカバーできるので廃棄パルプも減らせるとしています。
だいたい古紙70%を越えるとそのバランスが崩れることから、グリーン購入対象の基準が「古紙70%」になったようです。

日本製紙の2018年CSR報告書によると、紙製品の原料の内訳はパルプ46.3%、古紙53.7%。古紙の方が多いですし、今後も古紙リサイクルには積極的に取り組むとされています。

 

地球,エコ

古紙は積極的にリサイクルした方がいい

「古紙のリサイクルは実は環境に悪い」ではなく、正しくは「古紙を漂白して新品同様の紙を作ろうとするのは環境に悪い」ということです。製紙メーカーは、古紙配合比率を高くする努力を続けています。各社のCSR報告書を見ればわかりますが、特に、新聞紙など多少色が付いていても問題のない紙への配合率は格段に向上しています。長くなったので、紙袋用の紙の古紙含有率については、別の記事にまとめたいと思います。

本記事はあくまで一個人の主観に基づいて書いており、社会的なメッセージや啓発のつもりは一切ございません。
井上紙袋は特定の思想・心情を偏向的に支持することはいたしません。本記事に対するお問い合わせはご遠慮ください。

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