かみちゃん:
やっと私も会社内のエコな会話についていけるようになりました。今日は、井上さんに紙袋の捨て方について教えてもらいたいんです。
井上さん:
かみちゃんは成長めざましいなあ。よ!意識高い系!
かみちゃん:
さっそくなんですけど、ハッピータックの付いた紙袋ってどう捨てたらいいんですか?ハンドルが思いっきりプラスチックだから、古紙回収に出せないですよね。
井上さん:
そうだね。分別して捨ててくれ。紙袋本体は古紙、ハッピータックはPE(ポリエチレン)でできているから可燃ゴミだ。
かみちゃん:
あのハンドル、プラゴミとして出せないんですか?前にドレッシングのボトルを捨てる時、キャップに「PE」って書いてあったけど、プラマークが付いていましたよ。PE=プラゴミなのかと思っていました。
井上さん:
実はそうではない。プラマークが付けられるのは、「容器包装プラスチック」だけなのだ。容器包装プラスチックには、PET、PE、ABS、PA、PC、PP、PSなどさまざまな材質が含まれるが、容器包装という共通項がある。
紙袋は容器包装プラスチックではないから、ハッピータックにプラマークは付けられない。
かみちゃん:
材質じゃなくて用途で分類する意味がわからないよ。容器のPEはプラゴミなのに、ハンドルのPEは可燃ゴミなの?納得いかないなあ。
井上さん:
私に言われても困る。樹脂系の工業製品は山ほどあるけど、消費者には判別しにくい。容器包装が一番身近なゴミだからまずは容器包装について決まりを作ったのだろう。
かみちゃん:
そういえば、歯ブラシもビーチサンダルも、普通に可燃ゴミに出してました。別の物に生まれ変われるなら、その方がいいのにな。
井上さん:
プラ回収されたゴミのうち、「他の物に作り替えられる」リサイクルは全体の23%だけだよ。
かみちゃん:
はあ?じゃあ集めてる意味ないじゃん。
井上さん:
一番大きい処分方法は「サーマルリサイクル」と呼ばれる方法で、全体の約6割を占める。プラスチックを焼却して熱を取り出して、火力発電などに用いる。プラスチックは燃やすと高温になるから燃料として「再利用」できるわけだ。
未利用なのは、単純に燃やしてる9%と埋め立ててる7%に過ぎない。
かみちゃん:
そ、そうなんだ。じゃあ日本ってわりと優秀?
海洋プラスチックのことも最近よく聞くし、身の回りにプラスチック製品が溢れていると、悪いことしてる気分で不安なんだけど。
井上さん:
日本ではゴミはほぼ回収されていて行方も明確。リサイクル率も高い。そういう意味では優秀だ。
ただし、国民一人あたりのゴミの焼却量は先進国でナンバーワン。「サーマルリサイクルはリサイクルじゃない!」と言ってる団体もある。
焼却すると二酸化炭素が出るという意味で批判する団体も多い。
まあ、大抵のリサイクルは新品を作るよりも多くの二酸化炭素が発生するんだけど。それを加味してどっちがマシなのか精査しないと、フェアな論議にはならないよね。
かみちゃん:
やっぱりエコの話は難しいですね。これ、結論出ないやつだ。
井上さん:
その通り。日本では焼却量が多いことが批判の的になるんだけど、じゃあ大量消費の王座でビカビカに輝くアメリカはと言うと、ゴミはほとんど埋め立てているのだ。メキシコもカナダも、ゴミは基本的に埋めて終わり。道路にあるゴミ箱も、分別せずぐちゃぐちゃがデフォ。
かみちゃん:
確かに。海外ドラマで、マンションのゴミシューターにピザの空き箱を突っ込むシーンとかある。分別しないのかな?って思ってました。
井上さん:
国土が狭い日本では、無計画な埋め立ては自殺行為だ。だからゴミは焼却しか選択肢がない。ゴミ処理は人類みんなの課題だけど、その国ごとに事情は違うよね。
かみちゃん:
迷宮入りしていってる~~。つまりどうしたらいいの?
井上さん:
「リデュース、リユース、リサイクル」を聞いたことがあるだろう。エコで一番大事なのはリデュース(ゴミを出さない)と言われている。リサイクルだけ熱心なのがまず間違いだ。
ちなみに、井上工業所では、使用する素材はできるだけ環境負荷が少ないものを選んでいるぞ。
かみちゃん:
紙袋にハッピータックを付ける時は、必要かどうかをよくよく考えて……。ということかな。
井上さん:
必要なら付けてもいいと思うよ。重い荷物の紙袋は、やっぱりハンドルの方が持ちやすいよね。ハッピータックをやめることで紙袋では運べないとなれば、今度は不織布バッグや段ボールみたいな別の資材が必要になるんじゃないか?生産も消費も悪にしてしまうと人類は死ぬしかない。