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ブランドコンセプトは諸刃の剣?効果を失敗から学ぶ

ブランドコンセプトとは、その商品やサービスの「らしさ」を表すブランドを言語化したものです。ブランドコンセプトは、意図通りにブランディングしていくための重要なもの。ブランドの失敗例も挙げていますので、作り方のヒントに役立ててください。ブランドイメージは一度定着してしまうと抜け出すことが難しいので、最初によく練っておくことが重要です。

ブランディングの成功事例〜今治タオル〜

「ブランドコンセプトは、わかりやすく言語化すると効果的」で、ブランドコンセプトとは「ブランディングを舵取りするためにブランドイメージを言語化したもの」であることを解説しました。戦略に直結するので、ブランドコンセプトはとても重要です。と、説明されても良く分かりませんよね。ここで、廃業寸前まで追い込まれた今治タオルのブランド戦略を紹介します。

日本の繊維業全般に言えることですが、1990年代から海外生産の安価な製品に押されて国産製品はどんどん売れなくなりました。100年を超える歴史的なタオル産地である今治もその流れには逆らえず。2009年には、生産量は90年代の78%減、生産額は5分の1、会社の数は3分の1にまでまで落ち込みました。

多くの繊維産業が衰退していく中で、今治タオル産地がとったのは徹底的なブランド戦略。中小企業庁、日本商工会議所、全国商工会連合会の「JAPANブランド育成支援事業」から支援を受けて、「今治タオルの本質的な価値を伝える」ことをアピールしていったのです。実際のブランドコンセプトは、もっと長くて色々書いてあるのですが、簡略化するとこんな感じです。

結果、今治タオルの認知度は飛躍的にアップ。売上高は2006年の6,000万円から2013年には6.5億円へと、わずか8年で10倍以上に。まさに奇跡のV字回復!今では、「高くてもいいもの」「贈り物にもできる特別なもの」として確固たるブランドを確立しています。これなら、どんなに安い海外製品が輸入されても、同じ土俵で闘う必要もないし負けることがありません

訴求点がブレないから、効果が絶大に

今治タオルの成功は、ブランドコンセプトが明確なことが功を奏したと分析されています。
例えば、タオルを一から開発し直し、水に浮かべると5秒以内に沈むという高い吸水性を実現。イメージだけでなく商品力という裏付けも怠りませんでした。
佐藤可士和氏がネームタグをデザインし、世界の展示会に出まくってプロモーションを頑張り、タオルソムリエやタオルマイスターといった制度を作るなど、ほかにも様々なことを行っているのですが、常にブランドコンセプトは一貫しています。
「今治タオルの本質的な価値を伝える」です。だから、広告に使われるタオルは白にこだわったそうです。これは佐藤可士和氏のディレクションによるものだそうで、色や柄といったデザインをそぎ落とすことで、品質の訴求力を強めるという狙いだったとか。

曖昧なブランドイメージのまま広告を作ると、「タオルと言えば出産祝いや内祝いだから、パステルカラーがいいんじゃないか」とか「高級感を謳うために大人向けのダークカラーがいいんじゃないか」とか、制作者によってブレそうですよね。明確なブランドコンセプトと、それをきっちり守り通せるディレクターの存在って、本当に大事です。

ブランディングの失敗事例〜ユニクロの野菜事業〜

次に、ブランディングの失敗例として有名なものを1つ挙げておきます。このサイトで度々ユニクロさんを例に挙げてますが、誰もが知っている親しみのある企業というだけで、何の恨みもございません!一般化された話だと思うので、ごめんなさい……。

ユニクロを運営するファーストリテイリング社は、ユニクロだけではなく多角事業展開を模索していた時期があります。2002年10月には、株式会社エフアール・フーズという子会社を立ち上げて、「SKIP」というブランドで野菜事業を開始しました。
サービス内容は、全国の契約農家から仕入れた野菜の通販。スーパーで買うよりも高いが、安全で美味しい野菜が手に入る、というもの。

ユニクロが野菜に着目した理由は、「計画生産のノウハウがあるから」だったと読んだことがありますが、結果から言うと、野菜は衣服のような計画生産ができなかった……。安定供給できなかったり在庫を抱えたりと、食品を扱うには致命的なエラーが噴出。それをカバーできるだけの売上げが立たなかったので撤退を余儀なくされ、2年で約26億円という赤字を生みました。

敗因は、既存のブランドイメージの無視

撤退理由は野菜の計画生産というスキームを構築できなかったからだとされていましたが、多くの経済誌は「ブランド戦略の失敗」を指摘しました
実際には子会社のエフアール・フーズの事業なのに、やたらと「ユニクロ野菜」という単語で報道されたことも大きいのではと僕は思うんですけどね(経済誌のみなさんも要因じゃ……?)。

でも確かに、ファーストリテイリングと言えばユニクロ、ユニクロと言えば柳井社長、柳井社長と言えば……という強烈なブランドイメージがあります。なぜユニクロが野菜を売るの?というのが、消費者には全然ピンときません。誰だって、洋服屋さんでトマトを買う気にはならないですもんね。

この例から学べるのは、ブランドコンセプトは一度定着してしまうと抜け出すのは難しい、新しいことを始める時の枷にもなるということ。諸刃の剣なんですね。

ジーユーの成功で、やっぱりブランドって大事だとわかる

ところで、野菜通販に踏み出したエフアール・フーズの社長さんがどうなったか、気になりませんか?26億円の赤字って、僕ならロープを買いに行きたくなる数字。まさか……ゴクリ。

実は、この時の社長の柚木治氏がジーユーの代表取締役(2019年現在)です。ジーユーの立ち上げは2006年なんですが、低迷していた序盤に柚木氏が投入されています。990円のジーパンや、ガウチョやスカンツといった安価なトレンドアイテムの開発で大躍進。現在、ジーユーは売上げ1,000億円のブランドになっています。柚木さんすごい。26億円の赤字くらい、もう何でもない(笑)。

ユニクロとジーユーは、まったく同じノウハウを使って同じくアパレル商品を提供しています。ジーユーの発足当初は「ユニクロとジーユーって何が違うの?」という認識だったと思います。
しかし、ターゲットも商品もユニクロとジーユーは微妙に違うし、同じ顧客を食い合って潰れるということもなかった。
やっぱり、「安価な洋服屋さん」であるユニクロのブランドイメージは強烈で、得意な土俵での勝負は強いってことなんだと思うんですよね。「ユニクロがやってるジーユーなら行ってみようかな?」「ユニクロがやっているユニクロより安い店って何だ?」という安心感や興味の方が勝ったのでしょう。

こんな風に、自分を伸ばしも縛りもするブランドコンセプトですが、あまり難しく考えなくても作ることができます。「効果的なブランドコンセプトの作り方|基本的な3つのヒント」で、ブランドコンセプト作り方も紹介しています。

 

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