飲食店にとって予約ドタキャンの痛手は相当なもの。ネット予約が簡単にできる一方で、ドタキャンも気軽になってしまったように思います。相手の電話番号しか知らないからと、泣き寝入りしていませんか。実は損害賠償請求すればいいらしいですよ?
予約のドタキャン被害額が本当にエゲツナイ
ホテル業界では予約のドタキャンを「NO SHOW」と呼んでおり、飲食業界でも同様の呼び方がされます。ドタキャン問題は、店潰しかけた熱血野郎の僕としては、まったく他人事に思えません。
※経済産業省「No show(飲食店における無断キャンセル)対策レポート」より引用
経産省のレポートによると、飲食店の予約に占めるドタキャンの割合は0.9%。被害額は年2,000億円だそうです。さらに、1~2日前までのキャンセルを含めると、全体の6%にも上るそうで、損害額は年間で1.6兆円という、とんでもない金額になっています。
飲食店側は自衛手段を身につける必要があるのです。
ドタキャンは損害賠償請求できる!
予約のドタキャンは、民事的には「債務不履行」と呼ばれます。ドタキャンなんて言い方をするから軽く聞こえるだけ。万引きは窃盗、オヤジ狩りは強盗。正しい言葉を使うのは大事。
ネット予約はもちろんのこと、電話予約の口約束も、法律的には契約と見なされます。
このことは、2018年11月に経産省が発表したレポートにも明記されています。
2.損害賠償の考え方
一般的に、キャンセルによって顧客側が飲食店側に対して何らかの損害 を与えたのであれば、債務不履行や不法行為に該当する。どちらに該当する場合でも、飲食店側は顧客側に対して損害賠償を請求す ることが可能であると考えられる(民法 415 条、709 条)。
キャンセル料に関する損害賠償請求にあたっては、発生した損害額の算定や、適切なキャンセルポリシーの設定、損害額の算定が必要となる。
(1)「キャンセル」に対する損害賠償の考え方
一般的に、飲食の提供契約は、予約方法が何であるかに関わらず、内容が確定していれば、その時点で契約は成立すると考えられる。契約の内容が表示されるネット予約はもちろんのこと、口頭のみの電話予約であっても、契約は成立することがある。この場合、一方的な「キャンセル」に対して損害賠償を請求することが可能であると考えられる。一方で、契約の内容が確定していないと考えられる場合でも、消費者の一方的な「キャンセル」に対し、不法行為に基づく損害賠償を請求することは可能であるものと考えられる。
(2)事前キャンセルにおける損害賠償の考え方
事前のキャンセルであっても、それによって顧客側が飲食店側に対して何らかの損害を与えたのであれば、債務不履行や不法行為に該当する可能性がある。どちらに該当する場合でも、飲食店側は顧客側に対して損害賠償を請求することが可能であると考えられる。ただし後述する通り、個別の事例毎に、発生する損害の事由や程度、時期等が異なるため、個別の事例毎に損害賠償額も異なると考えられる。
※経済産業省「No show(飲食店における無断キャンセル)対策レポート」より引用
つまり、ドタキャン被害について、損害賠償請求できる。ただし、コース予約や席のみ予約の場合では、損害度合いなども異なってきます。それぞれの場合について、どのように考えるかが上のリンク先に書いてあるので、お困りの方はぜひ読んでみてください。
相手の携帯電話番号しか分からなくても大丈夫
実際にドタキャンした客を相手取って、裁判を起こした例もあります。2018年3月9日に、初のドタキャンに関する民事裁判が行われ、店側が勝訴しました。
このお店は、予約内容をショートメールでお客さんに送っており、予約の詳細や「キャンセル時は100%の料理代を支払う」などが証拠として残っていたそうです。
被告には、13万9,200円と訴訟費用の支払いが命じられました。
このお店は、相手の電話番号しかわからないところから裁判をしています。
損害賠償請求は示談を目指す場合も訴訟を起こす場合も、文章でするので相手が住所不明ではどうにもなりません。携帯会社にはプライバシーポリシーがあるので、第三者の一般人が個人情報を開示させることはまず無理です。
しかし、弁護士や警察官などは正当な理由があれば個人情報の開示を請求できます。弁護士がこの請求を行うことを「弁護士照会」と言います。
上の裁判では、この弁護士照会で相手を割り出して、訴訟に持ち込んだということです。
このように、相手の携帯電話番号しか分からなくても損害賠償請求することができるので、被害が甚大な場合には、検討しましょう。
裁判するのにいくらかかるか
普通はいきなり裁判はしません。訴訟を起こす側にとっても、金銭的、時間的、精神的に負担がめちゃくちゃ大きいからです。
最初は「損害賠償請求書」を送りつけて示談解決を目指します。住所さえわかれば、これは自分でもできます。相手が反論してきたり、無視したりしてらちがあかない場合に、裁判です。
裁判費用は、ほぼ弁護士費用です。弁護士費用は、通常は着手金と成功報酬に分かれます。着手金は請求額の10%くらい。請求額が50万円の訴訟なら、弁護士さんに5万円払えば依頼を受けてくれるということです。
成功報酬は弁護士事務所ごとに、裁判の内容によって規定を作っています。「民事訴訟で300万円以下の場合17%」のようにです。
請求額が低い場合は、お金はあまり手元に残らなくて疲労だけが残る……ということも考えられるので、訴訟までするかどうかは費用対効果にかかっています。
ただ、上に挙げた判例からは「確かに予約を受けたことやキャンセルペナルティを明示していたことが証明できれば、勝てる見込みは非常に高い」ということがわかります。
判例が増えれば、「ドタキャン=訴えられる」というイメージが定着するため、被害が減る可能性がありますね。
お店側のドタキャンに対する自衛策も必須
今回は、飲食店のドタキャン被害や裁判について説明しました。残念ながら、現状、まだまだドタキャンをする人がたくさんいるため、お店側でも自衛手段を講じて、少しでも被害を減らせるように努めていくしかありません。「飲食店のドタキャンを防ぐための対策は?」でもドタキャン対策を紹介していますので、ぜひ参考にしてみてください。