化粧品を売るなら、薬機法をちゃんと知っていないといけません。違反すると懲役や罰金刑ですからね!広告で謳っていい効果効能は、業界団体がちゃんとガイドラインを作っています。その数は56個。多い?少ない?見てみるとガッカリしますよ。えーと、超少ないです。
違法な化粧品広告はどれだクイズ!
いきなりですが、下の広告をご覧ください。この中に、違法な広告があります。
どれでしょうか?5秒で答えましょう!
正解は、全部違法です。
え?見たことあるよ?ってものばかりですよね。もう消費者も売り手も、麻痺してるんじゃないでしょうか。
しかし、みんなやってるから大丈夫!と放置していると、気づいたら自分だけ?……になっているかもしれません。よく目にする下品な広告は、メーカーではなく個人のアフィリエイターが作ったもの。メーカーは知らぬ存ぜぬが通じる仕組みなんです。自衛してる人はしてますよ。
(上の画像は僕が10分で作ったインチキ広告です。念のため)
化粧品の広告は、薬機法によって規制されている
化粧品は薬機法に従う必要があり、広告の表現方法も規制されています。
薬機法は、正しくは「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」と言います。めちゃ長いので、略して「ヤッキホウ」と呼ばれています。
かつては、「薬事法」(ヤクジホウ)と呼ばれていました。2014年、医療プログラムやその記録媒体も制限の範囲に含むよう改正されて、名称も薬機法となりました。
こちらの記事も併せてお読みください。
「その広告、薬機法違反かも。化粧品広告でやりがちな表現6つ」
化粧品広告で、謳える56個の効果効能
薬機法は細かいところまで書いていないので、判断基準が曖昧な広告表現がたくさんできてしまいます。そこで、業界団体は行政機関と意見交換しながら化粧品広告に関するガイドラインを作成しています。
それが、日本化粧品工業連合会の「化粧品等の適正広告ガイドライン」です。
このガイドラインによると、化粧品が広告で表現することができる効果効能は56個です。
(1) 頭皮、毛髪を清浄にする。
(2) 香りにより毛髪、頭皮の不快臭を抑える。
(3) 頭皮、毛髪をすこやかに保つ。
(4) 毛髪にはり、こしを与える。
(5) 頭皮、毛髪にうるおいを与える。
(6) 頭皮、毛髪のうるおいを保つ。
(7) 毛髪をしなやかにする。
(8) クシどおりをよくする。
(9) 毛髪のつやを保つ。
(10) 毛髪につやを与える。
(11) フケ、カユミがとれる。
(12) フケ、カユミを抑える。
(13) 毛髪の水分、油分を補い保つ。
(14) 裂毛、切毛、枝毛を防ぐ。
(15) 髪型を整え、保持する。
(16) 毛髪の帯電を防止する。
(17)(汚れをおとすことにより)皮膚を清浄にする。
(18)(洗浄により)ニキビ、アセモを防ぐ(洗顔料)。
(19) 肌を整える。
(20) 肌のキメを整える。
(21) 皮膚をすこやかに保つ。
(22) 肌荒れを防ぐ。
(23) 肌をひきしめる。
(24) 皮膚にうるおいを与える。
(25) 皮膚の水分、油分を補い保つ。
(26) 皮膚の柔軟性を保つ。
(27) 皮膚を保護する。
(28) 皮膚の乾燥を防ぐ。
(29) 肌を柔らげる。
(30) 肌にはりを与える。
(31) 肌にツヤを与える。
(32) 肌を滑らかにする。
(33) ひげを剃りやすくする。
(34) ひげそり後の肌を整える。
(35) あせもを防ぐ(打粉)。
(36) 日やけを防ぐ。
(37) 日やけによるシミ、ソバカスを防ぐ。
(38) 芳香を与える。
(39) 爪を保護する。
(40) 爪をすこやかに保つ。
(41) 爪にうるおいを与える。
(42) 口唇の荒れを防ぐ。
(43) 口唇のキメを整える。
(44) 口唇にうるおいを与える。
(45) 口唇をすこやかにする。
(46) 口唇を保護する。 口唇の乾燥を防ぐ。
(47) 口唇の乾燥によるカサツキを防ぐ。
(48) 口唇を滑らかにする。
(49) ムシ歯を防ぐ(※)。
(50) 歯を白くする(※)。
(51) 歯垢を除去する(※)。
(52) 口中を浄化する(歯みがき類) 。
(53) 口臭を防ぐ(歯みがき類)。
(54) 歯のやにを取る(※)。
(55) 歯石の沈着を防ぐ(※)。
(56) 乾燥による小ジワを目立たなくする。
(※使用時にブラッシングを行う歯みがき類)
どうですか?
「56個もあるのか」って思って見始めた方は、ガッカリしたと思います。
なーんも、できんじゃないか!と。
シミが取れる、小顔になる、美白できる、たるみが取れる、輪郭がスッキリする、二重顎解消、傷んだ髪を修復する、まつげを伸ばす、若返り、ほうれい線を消す、シワを消す。どれもNGです。
そもそも、そんな効果が科学的に証明された化粧品なんて存在するの?と突っ込みたいけど……。本当に効果があるなら、それを証明してガイドラインを修正するよう運動したらいいと思う。
化粧品の効果効能が、こんなに少ない理由
薬機法では、以下のものを化粧品と定義しています。
人体を清潔にし、美化し、魅力を増し、容貌を変え、または皮膚や毛髪等を健やかに保つために、皮膚または毛髪に塗擦、散布などされる物で、人体に対する作用の緩和なもの(医薬品、医薬部外品の効能効果を持つものを除く)
化粧品は、「作用の緩和なもの」だけです。だから、謳える効果効能が少ないんです。
間違えてはいけないのですが、これは「塗るだけで痩せる」「パックするだけでシミが取れる」といった未知の美容物質が存在するか否かという話ではありません。
もし仮にそういう商品があるとしたら、それは皮膚の生理代謝機能に細胞レベルで影響を与えていることになるので、化粧品の範囲を逸脱している。だから、化粧品として販売することはできない。ということです。
顔かたちが変わるほど効果があるなら、医薬品販売許可をとり、安全性に疑義がない状態にして、薬品として売らなければいけません。
だって、そうじゃないと危ないですよね?副作用があったらどうすんの?って普通に思います。
化粧品の広告は、客の想像力が鍵
効果絶大な化粧品は存在しません(化粧品として販売できる化粧品は)。
しかし、化粧品を求める人は、もちろん「絶大な効果」を求めて化粧品を買っていますよね。
だって化粧品メーカーは、あたかも絶大な効果があるかのように見せてますから。
大手メーカーは、ちゃんと合法な広告の範囲内で、それができています。
そのために必要なのは客の想像力をくすぐる技。
いかに期待感を高め、こっちが言えない部分を勝手に想像させるか。売れる化粧品広告を作るということは、このテクニックを極めるということです。
資生堂がモデルに旬の女優を起用するのは、心理学で言うところのハロー効果を狙ったもの。女優が出てきて微笑むだけで、その女優が「毎日その化粧水でお手入れしてます」なんて言ってないのに、勝手に消費者が期待感を高めてくれるというわけです。
あるいは、違法スレスレで禁止されていることに近い効果を出す方法も、いくつかあります。
それはまた別の記事で書きます。あんまりやる気ないけど、気が向いたら……。
それでは〜。