MENU

2020年、薬機法がまた変わる。課徴金制度の導入で潰れる会社が出るかもしれない

薬機法が改正されました。施行されるのは2020年度中です。その中で業界にとってかなり厳しい罰則が誕生しました。これまでの罰金だけではなく、売上に応じた課徴金があります。特に化粧品関係者の会社さんは要注意。必ず知っていないとまずい情報です!

これまでは、違反しても意外と手ぬるかった薬機法

化粧品の製造販売は、薬機法によってさまざまな制約を受けています。広告もその一つ。
薬機法66条によって、「虚偽又は誇大な記事を広告し、記述し、又は流布してはならない」という決まりがあります。
具体的には、日本化粧品工業連合会の「化粧品等の適正広告ガイドライン」があります。このガイドラインは法律文書ではないし、連合会の自主基準です。とはいえ、法律文書だけでは具体的な表現方法にまで踏み込んでいないので、勝手な解釈で広告を打っているとエラい目に遭うかもしれません。ガイドラインは必要。
これは全国医薬品等広告監視協議会と連携して作ったものなので、実質これに従っておけば安心です。

薬機法の広告規制に違反すると、2年以下の懲役もしくは200万円以下の罰金に処され、またはこれを両方食らうとされています。
ところが、法律が規制している範囲がぼんやりしているせいか、いきなり懲役やいきなり罰金なんてことはないんだそうです。
まずは改善命令が出ます。無視したとしても、懲役は考えにくい(メリットが薄いから)。

つまり、命令を無視して売りまくろうが、罰金200万円で済むなら安いものと考える人がいてもおかしくはない状態でした。

薬機法が変わる。課徴金制度とは

化粧品の広告というのは、みなさん消費者側として体感する通り、違法な広告のオンパレードです。イタチごっこも甚だしい。
そこで、処罰を厳しくする制度が導入されます

2019年11月27日に、参院本会議で改正医薬品医療機器法(薬機法)が可決しました。
7年ぶりの改正です。最大の注目点は課徴金の導入。

虚偽広告をしていた期間を対象に、売上額の4.5%を徴収するというもの。
施行は一年以内(おそらく2020年度中)です。

詳しくは厚生労働省の資料もどうぞ。
課徴金制度の導入(厚生労働省)

違法広告の掲示で、「課徴金1億円」もありえる

たった4.5%かと思うかもしれませんが、けっこう大きい額だと思います。
たとえば、Aという会社が定価2,980円のクリームを販売していたとする。
広告文句はこんな感じで。
「一週間続けたら、塗るだけでシミがぽろっ!レーザー卒業する人続出!」(違法)
「毛穴の汚れがどろどろ落ちて、シワまで消える!10歳若返る奇跡のクリーム」(違法)

広告では聞いたこともないような化粧品が「1,200万本突破!」なんてよく書いてます。
これが本当だとして、Aという会社のクリームの売り上げにあてはめてみましょう。

1,200万本×2,980円の売上は、357億6,000万円です。
課徴金は、16億920万円です。

営業利益ではなく、売上に対して課されるのがヤバイ

化粧品会社にとって課徴金の4.5%がいかに高いかは、営業利益率の低さを考えてみればわかると思います。

大手の化粧品メーカーの原価率は、だいたい25〜30%と言われます(上昇傾向)。
販管費率は65%くらいです(メーカーによる)。

販管費率とは、売上に対して販売費や一般管理費がどれだけ占めているかを表した数字です。
なお、原価は販管費には含みません。売上から原価と販管費をひいたのが営業利益。売上に対するその割合が営業利益率です。
原価率25%、販管費率65%なら、合わせて90%が支出になります。
営業利益は10%しか残らないということです。

実際、資生堂の決算報告書を見ると、2018年の営業利益率は9.9%しかありません。
しかもこの数字、「営業利益率が2年で2倍になった快挙」として報告されています。
つまり、過去はもっと低い。
参考までに、資生堂の営業利益率の推移は下の通りです。

2013年 3.8%
2014年 6.5%
2015年 3.6%
2016年 4.3%
2017年 8.8%

要因は分析可能なのでしょうが、単純にこの数字だけ見ると、
営業利益率3.6%には驚きますね!!
9,620円かけて10,000円の商品を売って、利益が360円ってことですから。安定して売れていないと不可能です。逆にブランドの強さを感じる。

化粧品は広告すればするだけ売れる業界と言われているので、資生堂ほど販管費にお金をつぎ込んでいない会社さんでも、粗利ははたから見るよりずっと少ないというのが普通です。

先に挙げたクリームを売るAという会社の営業利益率が10%なら、営業利益は35億7,600万円。課徴金は16億920万円ですから、かなり痛いはずです。

違法広告はやめよう

長くなりましたが、まとめると課徴金怖いよねって話です。
化粧品販売をしている会社さんは、広告についてかなり勉強しないといけませんよ!

→このページを読んだ人が見ている記事「最強の販促ツール知ってる?」