MENU

ロゴの変更で失敗した企業。なぜ失敗したのか?

アメリカの大企業であるGAPとトロピカーナは、ロゴ変更の失敗を認め、リニューアル前のロゴに戻しました。莫大な費用をかけた新しいロゴは、わずか数日で姿を消す事態に。リブランディングにおける企業と消費者のすれ違いを、実例を紹介しながら考察します。

何が悪いの?ロゴ変更の失敗|実例から考査してみた

企業や商品、サービスのシンボルであるロゴは、消費者の購買意欲を左右する重要なもの。ビジュアルアイデンティティは、定着・浸透してこそ意味を成すものですから、その変更は大冒険です。
しかし、見慣れたロゴは新鮮さを感じさせませんし、会社そのものが先進性を謳いたい局面では思い切ったロゴの変更が行われることがあります。
ここでは、マンネリから脱却しようとロゴのリニューアルを図り、ファン離れが深刻化した失敗例を紹介します。失敗から学びましょう!

数日で元に戻された「GAP」のロゴ

アメリカを代表するアパレルメーカー「GAP」といえば、デニムやキャップ、アメリカンカジュアルを多く取り扱っているファストファッションブランドです。日本でも馴染み深く、ユニクロと比較されることもありますね。
四角いブルー地に白抜きされたGAPのロゴは、ジーンズを買いに行く消費者の道しるべとなっていました。

新しく発表されたロゴがこれ。あなたはどう思う?

GAPは2010年に「進化し続けるブランド」を訴えるためにリブランディングを行い、20年以上使ってきたロゴのリニューアルを決行しました。新しいロゴは、王道フォントのヘルベチカ。マイクロソフト、エビアン、オリンパス、無印良品、3M、トヨタなど、そうそうたる企業が使っている、勝者のフォントです。


黒いGAPの文字の右上には、ブルーのグラデーションを小さく配置しました。好みを聞かれるなら僕は嫌いだけど(特にグラデが……)、別に悪くはないと思う。
ステム(欧文明朝体の上下についてる小さい足)のないフォントの方がカジュアルさが増すし、旧ロゴよりもユニセックスなイメージがある。
しかしこのロゴは、わずか2日で姿を消すことが決定しました。ロゴが変わったことすら知らない人もいたでしょう。なぜ、元に戻されたのでしょうか?

Facebookで2,000件の批判が殺到

リニューアルされたロゴ発表の後、TwitterやFacebook、MySpaceでネット民が騒ぎを起こしました。Facebookには2,000件を超えるコメントが付き、Twitterには偽の公式アカウントが登場。フェイクニュースを流し、新しいロゴをからかういたずらが横行しました。

これにGAPは対応。Facebookでユーザーに呼びかけました。「あなたがたの、ブルーボックスロゴへの情熱はわかりました。あなたがたのアイデアも見せて下さい。クラウドソーシングでロゴを公募するプロジェクトを始めます!」

ネットユーザーは、大企業がこんなに迅速に我々の声を聞いてくれるなんて!と感激したでしょうか。してやったりと溜飲を下げたでしょうか?
その逆です。

GAPに残ったものは、不信感だけ

「話題づくりのためにわざと最悪のロゴデザインを選んだ」「さっさとロゴを元に戻せ」と、さらに炎上してしまいました。
そこでGAPは、「ロゴを元に戻します」と宣言。SNSに振り回される、信念のない企業という印象だけを残してしまいました。

GAPは、ネット民のからかいを受け止めずにスルーするべきだったのかもしれません。あるいは、もう少し穏やかな改変にとどめるべきだったのかもしれません。
大企業の場合には、あまり劇的な変化をさせずに段階を経てロゴを変える手法もよく使われます。新規顧客が欲しくても、せっかく根付いた既存顧客を捨てては意味がないからです。
AmazonもSONYもGoogleも、みんなマイナーチェンジというロゴ修正は繰り返してきています。

既存顧客を捨ててでもブランド再生を求めたのなら、信念を持って貫けばいい。ネットの意見に揺らいで撤回するのはダサい。だって、チャレンジする前にあきらめちゃってますからね。貫いたらどうなってたか誰にもわかりません。

消費者の気持ちに気付けなかった「トロピカーナ」

もう一つ、有名なロゴ変更失敗の例として挙げられるのがトロピカーナ。
2009年にオレンジジュースのパッケージデザインを変更し、GAPと同じように元の路線に戻しています。

食品のパッケージデザインは、商品そのものが看板になる上、消費者にその場で決断させなければいけない。パッケージの善し悪しがすぐに結果として表れる、非常にシビアな世界なんだそうです。
日本のお菓子の場合、「パッケージを変えて売上げが10%以上上がらなければそのデザイナーには二度と仕事が来ない」という記事を、だいぶ昔に『デザインの現場』って雑誌で読みました。

トロピカーナはなぜ失敗したのでしょう?

ロゴとパッケージを変えて、20億円の損失

さっそく見て下さい。トロピカーナの変更したロゴはこちら。
左が旧。右が変更後。これは素人目にももったいない。
ポンジュースがリボンシトロンになっちゃったくらいの衝撃!!
トロピカーナのいいとこ全部、綺麗さっぱり捨ててきたって感じです。どうしてこうなった。

画像出典:CNN MONEY

欧文は、縦に配置するより横表記のほうが視認性が高い。
縦に置くメリットは「なんかおしゃれっぽく見せる」とか「字をでかくできる」くらいなのに、オシャレでもないし字も小さい……。
オレンジ果実のイラストをグラスに入ったジュースに変更したことで、フレッシュやジューシーというメッセージも損なわれてしまった。せっかくの果汁100%なのに、果汁10%くらいに見えます。

消費者が「元に戻せ!」とクレームを起こすのも無理はないでしょう。結果、パッケージひとつで2,000万ドル以上の損失(約20億円)が出る事態となりました。

見慣れたものは安心、信頼を生む

長年にわたり愛用してきた商品には、愛着や親近感が生まれます。それに伴い、安心して口に入れられるといった信頼も持っているでしょう。トロピカーナのロゴリニューアルは、変化への悲しみや恐怖を消費者に与えてしまったのだと思います。
ビジュアルアイデンティティであるロゴは、見た目の善し悪しだけでなく消費者の気持ちも汲み取ることが大切です。リブランディングの際には、消費者側の視点も必要なのですね。

→このページを読んだ人が見ている記事「最強の販促ツール知ってる?」