悪質クレーマー対策は店舗運営者さんにとって大きなストレスであり悩みの種でもありますよね。一般常識を逸脱したクレーマー対策に、かかってきた電話を勝手に録音することは違法行為になるのでしょうか。ここではクレーマーとの会話内容を録音する秘密録音や、無断録音が違法行為なのか詳しく解説していきます。
お客様からの電話を勝手に録音してもOK。録音を伝える義務もない
結論から書きます。電話の内容を勝手に録音することは違法ではありません。
ホントは録音なんて誰もやりたくないですよね。でも、会社や店舗を悪質クレーマーから守るために、必要ならとってもいい手段だということを覚えておいてください。
勝手に会話を録音すること=盗聴!と誤解されるかもしれませんが、盗聴は当事者同士しか知り得ない会話を第三者が盗み聞きして録音することをいいます。
対して、相手に知らせずに会話を録音することは、秘密録音と呼ばれます。
秘密録音は、当事者同士の会話を記録する行為です。そもそもその場で自分が聞けることを記録しただけです。これが違法なら電話口でメモを取ることも違法になってしまいます。
だから、電話の録音に違法性はありません。盗聴と秘密録音は全く別物です。
相手に録音していることを知らせる必要もありません。
そもそも盗聴を裁く法律が存在しない?
よく調べてみたら、なんと盗聴そのものを裁く法律がないのです。
犯罪になるのはその過程や後の行為。
録音機を仕掛けるたけに他人の部屋や敷地に勝手に侵入する(住居侵入罪)、他人の電話の会話を無断傍受する(有線電気通信法違反など)、録音内容を勝手にSNSで公開したりマスコミに流す(プライバシー侵害、名誉毀損など)などです。
秘密で録音したデータも、証拠能力がある
裁判では、違法取得した証拠は証拠能力が否定されるという原則があります。
たとえば、相手にこっそり飲み物を飲ませてコップから採取したDNA情報、相手の家に不法侵入して盗み出した日記などは、いかに有力なデータであっても収集方法が違法なら証拠として通用しません。
秘密録音は違法ではないので、裁判でも証拠として扱われます。これは最高裁での判例があります。クレーム対応の行き着くところは裁判で、争点は言った言わないになりがちです。録音データがあると自分の潔白や相手の不法行為が証明できます。
ただし、録音することそのものが違法という場合もあります。その場の会話自体が秘匿すべきものの場合です。たとえば、法廷での弁論内容は録音が禁止されています。また、DVや児童虐待などの相談窓口といった場所で録音をすると違法とされることがあります。
悪質クレーム対策の現状と会社の対策とは
ゼンセンが168組合、50,878人を対象に調べたクレーム調査データがあります。
出典:ゼンセン・クレーム調査データ
これによると、来店客からの迷惑行為に遭遇したことがある人は全体の73.9%。
もっとも多いのは暴言(27.5%)、次に多いのが「何回も同じ内容を繰り返すクレーム」(16.3%)。中には、「土下座の強要」(1.8%)もあります。
ちょっと意外だったのは、「SNS・インターネット上での誹謗中傷」(0.5%)が、並ぶ項目の中ではもっとも件数が少ないこと。これは暗数があるかもしれないですけどね。
悪質なクレーマーからスタッフや店舗を守るためにどのような措置が必要かというアンケートでは、下記のような結果が出ています。
「こんな行為は悪質クレームなんですよー」とか「駅員への暴力は犯罪ですよー」っていう啓発活動は鉄道会社が盛んにやっていますよね。鉄道会社ならマナー広告を打ちやすいですが、ほとんどのお客様がよいお客様なのに、一部のクレーマーのために全体に対して牽制かますというのは、一般企業ではやりづらいところがあります。
「クレーム対策教育」「法律による防止」や「マニュアル整備」「組織体制の整備」ならどんな組織でもやれるのではないかと思います。
通常のクレームは学びのヒントなので耳を傾けないとダメですが、悪質クレームの場合は「さっさと現場から切り離す術」が大事だな〜と僕は思います。
現場のスタッフに応対させたら、店長が見てないところで勝手に土下座させられていたなんて最悪です。そのお客さんが溜飲を下げて帰ったとしてもスタッフが傷つくとデメリットが大きいです。
店長さん、自分も守ってください
よく、悪質クレーマーに対しては「店長が毅然とした態度で対応しましょう」と言われます。そうしないとスタッフが店を信頼してくれないとか、他のお客さんに対しても失礼になるとか。
でもね、無理しないでください。だって、メチャクチャ怒鳴ってる客って、店長だって怖いですもん。暴力を振るわれなくたって、精神的なダメージはけっこう大きいです。
電話は録音して証拠を残す。その上で、さっさと法律屋さんに依頼すべきだと思います。
昔は弁護士って相談だけだけでも30分5,000円とかとられましたが、今は無料相談をしている弁護士事務所が多いです。依頼するかどうかはさておき、「弁護士に相談して後日対応します。この場では解決できません。時間をいただきます」として、粘っても怒鳴っても無意味だとわからせましょう。
抑止のために録音を伝えるという手もある
企業や会社に問い合せ電話をかけると「この通話内容はサービスの品質応対向上のために録音しております」というアナウンスが流れますよね。
これの主目的は、恫喝・恐喝抑止なんだそうです。
そりゃそうですよね。毎日何十、何百件もかかってくる電話を、後から誰が聞くんだって話ですよ。いざという時の証拠取りであると同時に、お客様側に「会話を録音されているんだ」という意識を向けさせ、常識を逸脱した態度を取らせないための予防線になるのです。
悪質クレーマーの対応に限界を感じている店舗経営者さんは参考になさってみてください。
以上、熱血野郎でした~。