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飲食店さんは覚えておきたい、宗教における食の禁忌

宗教には禁忌、タブーとされることがあり、食べられないものも宗教により異なります。しかし宗教になじみの薄い日本では多くの飲食店は多様な宗教観に対応できていません。今後ますます増えるであろう外国人観光客に対して、飲食店がとるべき宗教や信仰者への対応をご紹介します。

宗教を持つことは当たり前。文化を理解して外国人対策を

多くの日本人は、一つの信仰に生涯頭を垂れるという考えを持ちません。生まれた時は神式でお宮参り、結婚式は教会式、死ぬときは仏式。クリスマスもハロウィンもイベント化。神棚と仏壇が同じ家にあるどころか、生活の中には八百万の神が……。
その寛容さにも美徳がありますが、国際的に見るとこれは「普通」ではありません

世界の人口の70%を超える人々は、世界5大宗教のいずれかを信仰していると言われています。宗教は、民族やルーツを表す大切なアイデンティティと考えられているため、宗教を持つこと自体はスタンダードな人生観です。
日本には「郷に入っては郷に従え」という言葉がありますね。「嫌なら食うな」という意見もあるかもしれません。しかし、それでは訪日客を切り捨てることになってしまいます。

様々な宗教観やタブーに対する正しい理解と、柔軟さ。
これから生き残るためには必要な知識です。

まずは食べられないものを知ろう。宗教別食のタブーを紹介

キリスト教

日本でも比較的なじみのあるキリスト教では、食に関する戒律はゆるく食べられないものは実はないと言っていいでしょう。ただしお酒については酩酊を厳しく律しています。またカトリックでは復活祭の46日前から始まる四旬節という期間は、食事の量や内容が制限された断食を行います。断食と言っても、すべての食事を絶つわけではなく、お酒を飲まない、好物を食べないといった感じらしいです。

・多くの宗派で酩酊を禁じている
・モルモン教はカフェインを禁じている

イスラム教

イスラム教において食べられるものは「ハラール」、反対に禁じられているものを「ハラーム」と呼びます。イスラムの食の戒律は非常に厳しく、不浄とされる豚については、豚肉はもちろんエキスの入ったブイヨンや、豚肉を上げた油を使用した野菜なども食べられません。

またお酒についても全て禁止されていて、調味料として料理にお酒を使用することもできません。みりんを多用する日本食は厳しいですね。

・豚肉
・豚から抽出したエキス(ラード、ゼラチン、ブイヨンを含む)
・お酒(料理酒、みりんを含む)
・血液(ソーセージなどに注意)
・宗教上の適切な処理がされていないすべての肉

ムスリムにとっては、食材だけでなく「処理・調理方法」も重要です。豚肉以外の肉であっても、次の条件に合わない肉はハラムとされます。

1.狩猟する人間が分別のあるイスラム教徒である、または啓典の民(制約と差別を受け入れる代わりに居住を許された異教徒)であること。
2.ナイフのように鋭く切れ、出血させることができるものを使用すること
3.殺生時にアッラーの御名を唱えること
4.殺生時切断すべき箇所は食道・喉・2本の血管(頚動脈・頚静脈)、あるいは、これら4つの内の3つ


このような狩猟の際の細かいルールだけでなく、禁止された食材を切った調理道具を使えばその料理はハラム(禁忌)となってしまうため、調理方法についても注意が必要です。

仏教

・仏教では動物性の食材をタブーとしており、肉や魚は食べられません。また五葷(ごくん)と呼ばれるニンニクやネギなどの香の強い野菜も禁じられています。精進料理と聞けば聞き覚えのある人も多いのではないでしょうか。

ユダヤ教

・厳しい食の戒律
ユダヤ教で食べられないものは非常に多く、私たち日本人からするとかなり驚くレベルなのではないでしょうか? 基本的には以下のもの以外は食べることができません。
・蹄が分かれており、反芻(はんすう)する4本足の動物
・水中生物はヒレと鱗のあるもの
・鳥(猛禽類など一部は除く)
・イナゴやバッタなど昆虫の一部
牛肉は食べてもよいとされますが血抜きが必要なため、ステーキは食べられません。また甲殻類も禁じられているためエビ・イカ・タコ・カキなどのシーフードも食べることはできません。

同じ宗教でも戒律は国によって違う。偏見はダメ

宗教の戒律は世界的に少しずつ弱くなりつつあると言われています。それでも信仰心の篤い国では休息日にプロスポーツの試合が中断される例があります。

トルコのムスリム女性にとっては、タンクトップ姿でカフェに座り、友だちとワインや煙草を楽しむのは日常です。チャーシューはダメだけど、豚骨ラーメンはギリOK!という人もいます。

同じイスラム教の国でも、コーランを字義通り頑然と守っている国、ある程度世俗化された暮らし方を享受している国など、意外と幅が広いのです。ベールをかぶっているからといって、その方がどんな食生活なのかはわかりません。決めつけず希望を聞くという姿勢は常に必要だと思います。

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